データ転送における設備投資モデルと事業費モデルの比較
ストレージにおける設備投資モデルと事業費モデルの比較、そしてそれがデータ保存、管理、転送、活用のコストに及ぼす影響について解説します。
ストレージを取り巻く世界は非常に流動的です。企業は、変化のスピードに対応するための新たな方法を検討していますが、データ転送とエッジ・ストレージを最適化して性能、回復力、価格の優位性を高めるための新たな方法は確かに存在します。ペタバイト規模のデータ転送であれ、エッジで使用する小型のストレージ・デバイスであれ、これまでにない新たな機会が生まれつつあり、企業は新しい方法で自社のコストを管理しようとしています。
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さらに、データの局所性も変わりつつあります。これまで、企業は大量のデータをオンプレミスのデータセンターや1カ所のクラウドに保管していました。現在では、様々な場所にある複数のストレージ・プラットフォームや複数のクラウド、エッジにデータセットを保存しています。IDCの予測では、2025年までに12.6ZBのストレージ容量(HDD、フラッシュ、テープ、オプティカル)を企業が管理することになるとされています。クラウド・サービス・プロバイダが管理するのは、そのうちの51%です。つまり、こうした容量の49%を企業がエッジとコアで管理することになります。
同時に、データの移動も増加しています。企業は現在、平均で36%の自社データを定期的にエッジからコアに転送しており、その量は今後2年間で倍増するとされています。ガートナーは、2025年までに企業が生成するデータの75%がエッジで生成され、その大半がコアからクラウドに移動されるものと予測しています。
最後に、こうしたすべてのデータをコストパフォーマンスの高い方法で管理し、活用することが最優先課題となり始めています。企業は、自社のストレージ予算が予想を上回る状況をすでに経験しており、クラウドの予算オーバーはもはや新常識になりつつあります。2020年には、企業の42.6%でクラウド支出が予算を上回りました。企業は、自社の費用をもっときめ細かく管理できる「サービス型」製品に移行することで、この状況に対処しようとしています。
データは重要な資産であり、サービスのみならず、データによる業務効率の向上、ROIの算出、さらなる投資機会を求める企業も効率よく使用する必要があります。また、エッジ・ストレージとデータ転送に関しては、こうした要件に対応する新たなソリューションを求める声がますます高まっています。データをエンドポイントからエッジ、さらにはコアやクラウドに転送し、必要に応じてそれを元の場所に戻すためには、新しい技術が必要です。過去に例を見ない予測不能なデータ増大、データ局所性やデータ移動に関するめまぐるしい変化、そして予算内でのデータ管理と活用に対する大きなプレッシャー - こうしたすべての要素を考慮すると、従来のストレージ手法ではデータを効率よく使用することができず、これまでにないアイデアが必要とされます。
優れた企業は、資産としてのデータの価値を正しく認識しています。また、非効率的なデータ管理がもたらす影響や、そうした資産の価値がいかに阻害され制限されるかも理解しています。一部の企業は、プライマリ・ストレージやエッジ・ストレージなどをチーム毎に割り当てて担当させるのではなく、ストレージを総体的にとらえ、すべてのストレージタイプにおける制約や機会、選択肢を探ることで、こうした非効率性に対処しようとしています。「StorageOps」と呼ばれるこの手法により、企業はメリットと制約、機会とデメリットについての理解を深めることができます。
その一方で、「DataOps」と呼ばれる包括的なエンドツーエンドの手法を通じて、データ・パイプラインのスピードとアジリティの改善に取り組む企業もあります。DataOpsはデータのアクセス性、可用性、統合性を改善しつつ、予算オーバーを最小限に抑えます。アジャイル手法をベースとして、データの取り込みから保護、さらには移動から活用に至るまでのあらゆる側面において、基準を満たす最適な状態にデータを保つことを目指しています。
このように、その手法を問わず、すべての企業はデータ保存、管理、転送、活用にかかるコストを管理する必要性に迫られています。ストレージに設備投資モデルと事業費モデルのどちらを採用するかの判断が重視されるのは、そのためです。
すでにご存じの通り、企業の多くはストレージの取得に際して設備投資モデルから事業費モデルへと移行することで、ストレージ予算をより効果的に管理するための取り組みを進めています。すなわち、ストレージを必要とする企業には、次の2つの選択肢があります。
この手法を取った場合、企業は多額の先行投資費用や3~5年毎の減価償却費、管理費、修理と保守の責任、データセットの増加に伴って必要とされるドライブ拡張、そして時間の経過と共にプラットフォームで必要な機能セットや拡張能力、性能に対応できなくなった場合に生じるサンクコストの問題などを抱えることになります。それにより、手元に残る現金が減り、企業は予測不能な保守費用とアップグレード費用を継続的に支払うことを余儀なくされ、結果的に技術的なロックイン状態に陥ります。
この手法を取った場合、企業は一社のサービス・プロバイダ(1つのパブリック・クラウド)または複数社のプロバイダ(複数のパブリック・クラウド)から請求される料金を継続的に支払うことになります。通常、そうした請求金額は管理下にある容量やオブジェクト数に連動しています。修理と保守はサービス・プロバイダが負担します。容量の追加はシームレスに実行でき、その結果として月々の請求金額が増えます。国によっては、事業費モデルには税の優遇措置が適用されることもあります。最後に、もしサービスが御社に合わなかった場合、サンクコストの問題やオンプレミスのストレージ・システムを廃止する必要性について悩むことなく、理論上は別のサービスへ簡単に移行することが可能です。
現在、ストレージを事業費としてとらえる企業が増えています。一社のクラウド・プロバイダや複数社のプロバイダからターンキー型の「サービスとしてのストレージ」プラットフォームの提供を受けることで、アクセスを簡素化でき、StorageOpsまたはDataOpsチームは多額の先行投資費用をかけることなく新しいサービスを追加することができます。大容量のデータ転送やエッジ・ストレージをはじめとするあらゆる種類のストレージにおいて、設備投資モデルから事業費モデルへの移行が積極的に進められています。設備投資モデルではコストが予測不能になり、費用がかさむことから、ストレージの事業費モデルは非常に理にかなった方法だと言えます。
料金設定の第1段階:従来の事業費型ストレージ
「サービスとしてのストレージ」を取り巻く現実としては、曖昧で分かりづらい料金体系によってサービスが複雑化していることが往々にしてあり、これは特に、大手クラウド・ベンダーが提供するエッジ・ストレージ機能やデータ移行機能に当てはまります。
ある大手クラウド・プロバイダの料金体系を見てみると、1つのクラウドにおける1カ所のデータセンター領域に関して次のように書かれています。
すなわち、こうした料金モデルはほぼ理解不能であり、驚くほど管理が困難なのです。データセットが増えてニーズが変化するにつれ、コストはますます予測不能になり、手に負えない状況に陥って、結果的に予算オーバーを招き、経営陣を失望させます。
この同じクラウド・プロバイダのエッジ・ストレージ製品ラインナップに目を向けてみると、エッジ集約、自動データ転送、さらには物理的なデータ輸送に数種類のデバイスが使用されており、料金体系も複雑です。具体的には、以下のような内容が記載されています。
さらに悪いことに、同社のエッジ・ストレージ製品ラインナップは閉鎖的なエコシステムであり、自社のクラウドでしか使用できません。結果的に設備投資モデルに縛られ、先行投資として購入することはなくても、月額料金を払い続けることになります。
エッジ・インフラストラクチャを採用したハイブリッドのマルチクラウド環境では、データは数十カ所、数百カ所、また場合によっては数千カ所にも広がっています。こうした複雑な料金体系と厳重に守られたエコシステムこそが、ストレージチームやデータチームの努力をすべて台無しにします。その結果、あまりに複雑で予測不能な事業費モデルにより、予算オーバーと予算の問題がいとも簡単に発生します。
StorageOpsおよびDataOpsチームはシンプルさを求めています。当社がこれまで結論付けたように、エッジ・ストレージ機能とデータ転送機能に対するニーズが急速に高まっている一方で、料金体系とエコシステムに関する制約が導入を阻んでいます。
ベンダーには、新たな料金体系を創り出す機会があります。本書ではこれを「OpEx 2.0(事業費モデルの第2段階)」と呼びます。これは、シンプルかつ明瞭でオープンな料金設定を求める企業の声を反映したモデルです。事業費モデルが持つすべてのメリット(利用時払い、先行投資費用なし、保守費用なし、サンクコストなし)を特徴としつつ、合理化された料金設定とオープンなエコシステムも実現します。企業はシンプルで透明性のある料金体系をもとに、必要なときに必要な分だけ料金を支払います。
一部のベンダーはすでに、企業向けのエッジ・ストレージおよびデータ転送サービスにおいてOpEx 2.0の料金体系を実現するための取り組みを進めています。具体的には、ベンダーに依存しないマルチクラウド型のエッジ・ストレージ・ソリューションを縛りのない明確な料金設定で提供するという方法です。こうしたソリューションを通じて、企業は閉鎖的なエコシステムによる制約や予算オーバーを招くことなく、自社のデータを集約、保存、移動、活用することができます。理想的なソリューションとは、企業が罰則や複雑な手続きなしに自社のストレージ要件をその場で臨機応変に調整できる自己管理型のサブスクリプション・サービスであると考えられます。データ転送とエッジ・ストレージが月単位で必要な場合であれ、年単位で必要な場合であれ、優れたベンダーは、成功に必要な機能を備えた幅広いデバイスを提供できるはずです。
最適なサービスは、1種類の低料金で以下のような特徴を備えていなければなりません。
Seagateでは、御社が必要とするサービスを提供しています。当社のエッジ・ストレージおよびデータ転送製品シリーズがあれば、OpEx 2.0モデルに基づくエッジ・ストレージまたはデータ転送インフラストラクチャを構築でき、他社の事業費モデルに見られるような複雑な契約内容をすべて回避することができます。
法人のお客様は、エッジからクラウドへの物理的なデータ転送に対応するため、「利用時払い」のサブスクリプション方式によるストレージ・モデルを検討し始めています。IDCの「Semiannual Public Cloud Services Tracker」(2021H1、2021年11月)によると、パブリック・クラウド・サービス単独での支出額は、2021年の2,170億ドルから2025年には5,240億ドルへと倍増する見通しであり、そのうち930億ドルは「サービスとしてのストレージ・インフラストラクチャ」(IaaS) で構成されているといいます。さらに、ガートナーによる調査「Competitive Landscape: Consumption-Based Pricing for On-Premises Infrastructures」(2020年10月)では、企業の53%がサブスクリプションでの技術取得を好ましいモデルだと考えていることが分かっています。
IT部門もまた、データの物理的な移動を自社の全体的なデータ戦略に不可欠な要素としてとらえる傾向が高まっています。競合するデータ転送ソリューションが存在することは確かですが、Lyve Mobileに匹敵する水準のマルチクラウド統合機能を備えたソリューションはほとんどありません。さらに、企業の多くは、オンプレミス型のハードウェアを追加するのではなく、クラウドベースの「サービス型」データ・ソリューションに移行し始めています。Lyve Mobileは、クラウド・ストレージや完全なコンピューティング機能を備えたサービスを含め、このようなサービスを広く補完することを目的として設計されています。
メディアおよびエンターテイメント、ジオサイエンス、医療をはじめ、膨大な非構造化データを生成する業種のお客様は、サブスクリプション・モデルがもたらす柔軟性と手ごろな料金に信頼を寄せています。必要なハードウェア、ソフトウェア、サービスのみに対して料金を支払うことで、コストを削減しつつ、エンドポイントからクラウドに至るまで、自社のデータ・インフラストラクチャで確実に業務に対応することができます。
サブスクリプション方式のストレージがもたらすメリットは以下の通りです。
Lyve Mobileによる事業費ベースのサブスクリプション・モデルを通じて、パートナー企業は、継続的なデータ転送と標準的なリフトアンドシフト方式でのアプリケーション移行にかかわる複数のニーズに対処する一方で、お客様の運用費とTCOを全体的に削減することができます。
Lyve Mobileのお客様は、柔軟な支払モデルを利用して、プロジェクトの規模を月単位で拡大・縮小し、自社のデータ転送サービスを最大限に活用しています。また、従来の購入モデルで発生しがちな遊休資産をなくすことで、コストを節減しています。さらに、この戦略により、パートナー企業は現場でのデバイス管理を簡素化し、プロジェクト要件の変更や移り変わりに応じて、技術のリフレッシュ/切り替えを実行することもできます。製品寿命に達した資産を処分する必要はありません。
Lyve Mobileのエッジ・ストレージおよびサービスとしてのデータ転送製品シリーズは、明確な料金設定に基づくオープン・プラットフォームを通じて、「OpEx 1.0(事業費モデルの第1段階)」がもたらす制約を回避できるようサポートします。
Lyve Mobileについての詳細は、https://www.seagate.com/products/data-transportでご確認ください。