循環型経済の奨励。データ・ストレージ・ドライブの再利用
新たな業界標準の確立に向けたGHG配分手法の比較
29 7月, 2024
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電子機器を含む多くの製品の生産と使用の特徴となっている「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」モデルから脱却するには、循環型の思考を持つことが極めて重要です。現在の慣行は、電子廃棄物の発生源の増大、貴重な未加工原料の消費量の増加、さらにはエネルギーを大量に消費する電子部品の製造過程における排出の原因になっています。
企業が持続可能性を優先し、温室効果ガス (GHG) 排出量を追跡し始めたことによって、循環型モデルでの排出量に対する関心が高まっています。しかし、現在のGHG排出量算定の枠組みでは、循環性が十分に考慮されておらず、そのことが循環型システムへの参加を阻害するという意図しない結果を招いています。現行の算定ルールでは、中古製品を購入したお客様のみがGHGの影響を減らすことができるため、再利用のために製品を返却するお客様に排出量の観点でのインセンティブはほとんどありません。
この調査では、再利用されたハードディスク・ドライブの最初のユーザーと2番目のユーザー間でGHG排出量を配分するための複数の手法を評価しました。対象となった手法は、確立されたライフサイクル評価 (LCA) 手法に含まれているもので、GHGインベントリの観点で使用されています。各手法は、両ユーザーの使用期間全体にわたる完全なドライブ・ライフサイクルの排出量から、一定の割合をドライブを使用した各ユーザーに配分するものです。こうした手法を使用すると、中古ドライブを購入したお客様だけではなく、両方のユーザーの排出量を削減できるため、両当事者とも再利用プログラムに参加するインセンティブが大きくなります。各手法の結果については、16TBのハードディスク・ドライブを再利用したケーススタディを使用して詳しく説明しています。各ユーザーへの配分方法と結果は、表1に示しています。
表1:本調査の対象となった配分アプローチの概要
配分手法 | ライフサイクル排出量の割合 | ||
ユーザー1 | ユーザー2 | ||
カットオフ法 | ユーザー1には、リサイクル前のすべての影響が配分される。ユーザー2には、リサイクルおよびその後の全段階の影響が配分される。 | 67% | 33% |
経済的配分 | 新品と中古の価格差に基づいて配分される。 | 41% | 59% |
サーキュラー・フットプリント式 (CFF) | 配分は、再生材料の品質、再生材料の需給、新材料の置換に基づいて行われる。 | 51% | 49% |
人間は変化に抵抗する傾向があります。そして人間が作り出したシステムの場合は、変化に抵抗する傾向がさらに強くなり、政策、プロセス、インフラストラクチャを通じて、有望な代替手段よりも現状維持を優先します。社会と企業が長期的な持続可能性への道を模索している今、社会と企業にとっての課題は、産業革命以降の世界経済を特徴づけてきた線形的な「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」モデルからの転換です。その目的は循環性、つまり、修理、再利用、リサイクルという包括的な戦略を通じて、成長を有限な資源の消費から切り離すモデルの実現です。循環性は人類の文明と同じくらい古い慣行であり、今まさに循環性の時代が再び到来したのです。
デジタル技術を特徴とする時代において、電子廃棄物は、線形的な経済思考がもたらす典型的な問題です。統計を入手可能な最新の年である2022年には、世界で記録的な620億キログラムという電子廃棄物が生成されましたが、環境に配慮した手法で回収およびリサイクルされた割合はわずか22.3%でした。2010年以降、正式なリサイクル活動は加速していますが、世界の電子廃棄物の発生量はリサイクル増加率を5倍上回っています (i)。循環型アプローチには、製品の寿命の延長、貴重な材料の回収、未加工原料の生産削減に関わる多くの手段が含まれています。循環性には、修理や部品交換による製品の耐用年数の延長、複数のユーザーによる製品の再利用、使用期間を延長するための改修や再製造、貴重な部品や材料のリサイクルと新製品でのリサイクル材料の使用などの段階があり、最後の段階は、回収や再利用が不可能な材料の責任ある処分です。破棄された電子機器を生産的な二次用途に転用する大きな変化を起こさなければ、世界的に貴重な未加工原料の消費がますます増加し、リサイクル、埋め立て、焼却、その他の持続不可能な処分に送られる電子廃棄物の量が増加することが予想されます。
企業は循環性を加速させる上で重要な役割を担っていますが、循環性を加速するには、企業が環境に関連するリスクと機会を評価する際に使用する温室効果ガス (GHG) 算定の枠組みを進化させる必要があります。しかし、GHGプロトコル事業者基準やスコープ3基準などのGHGインベントリ作成に適用される現在の大半のルールは、循環性を考慮していないため、より広い範囲への循環性の導入が阻害されています (ii)。GHG排出量算定にライフサイクル評価 (LCA) 手法を取り入れ、製品や材料の複数のユーザーにGHGによる影響を公平に配分すれば、製品のライフサイクル内の可能性をさらに総合的に捉え、再利用を奨励することができます。
Seagateは、自らが属するセグメントであるデジタル・データ・ストレージ部門を皮切りに、こうした変化を促し、電子機器市場における循環性を前進させる手助けをしたいと考えています。昨年、Seagateは「循環型社会の未来に向けた取り組みiii」を発行し、データ・ストレージの循環性への取り組みがもたらす主な機会や課題を明らかにするとともに、製品による影響の測定と報告に使用されているLCA手法について説明しました。Seagateは、製品のライフサイクルを延ばすため、以下を含むさまざまなソリューションを追求しています。
さらにSeagateは、この大規模な問題に対処できる立場にあります。1つのデータ・センターだけで、数千から数十万台のドライブが使用されている場合があります。これらのシステム向けに設計された再利用プログラムがあれば、数千台のドライブを中古市場に投入し、循環性をさらに促進できる可能性があります。
このホワイト・ペーパーと、その結果の根拠となるケーススタディは、ドライブの再認定と再利用の機会と課題のみに焦点を当て、最初のユーザーと2番目のユーザーの両方にインセンティブを提供できるGHG配分方法を評価および比較しています。ケーススタディの一環として、Seagateは、ハイパースケール・データ・センターのお客様、GHGインベントリの専門家、LCAの専門家を含む多くのステークホルダー・グループとのディスカッションを実施し、さらに発展した視点をここで共有しています。
多くの企業が二酸化炭素排出量の削減に尽力していますが、データ・ドライブを廃止する際には、依然としてIP(知的財産)や個人情報のセキュリティを保護することが最大の懸念事項です。Meta社のサステナビリティ・プログラム・マネージャーであるケリー・ジェンセン (Kellie Jensen) 氏は、「動作する機器を破棄したくないという認識は社内に広く浸透しているが、一方でデータ保護が最優先事項になっている」と述べています。世界的に、この懸念によって、ハードディスク・ドライブ (HDD) やソリッド・ステート・ドライブ (SSD) を物理的に破壊し、データを確実に復元不可能にするという一般的な慣習が今なお続いていますiv v。
Seagateは、自社の買い取りおよび再販プログラムに関連するお客様のデータ・セキュリティの懸念を解消するために、NISTの「メディア・サニタイゼーションのガイドラインvi」、ISO/IEC27040:2024vii、IEEE2883:2022viiiに記載されているメディア・サニタイゼーションの統一基準およびプロセスに準拠しています。これらの基準では「パージ」レベルの消去が定義されており、消去担当者が基本的な方法を使用する場合も、最先端のラボ技術を使用する場合でも、HDDやSSDからのデータ復旧を不可能にする物理的または論理的な技術を適用します。Seagateのすべてのデバイスが最低1つのパージ消去に対応しています。
Seagateは、お客様からサニタイズ済みドライブを受け取った後、すべてのデータを確実に削除するために追加のパージを実施してから、パージ済みの特定のSeagateドライブのものであることを検証可能な署名入り認定消去証明書をお客様に提供します。Seagateは、当社の製品再利用の取り組みに対する賛同を得るために、使用されなくなったドライブを回収してテスト、再認定、再販するためのプロセスも設計しました。
データ・ストレージ業界で循環原則を採用すると、企業と環境の双方に利益がもたらされます。
影響を軽減:複数の経済的ライフ・ステージを考慮して製品を設計すると、天然資源を節約し、資源採取に伴うエネルギーへの影響を低減し、寿命が終了した製品の不適切な廃棄による環境および健康への影響を低減できます。
コスト削減:使用段階の製品の優れたエネルギー効率と、寿命が終了した製品の再販により、最初のユーザーは製品の使用期間中および使用終了後のコストを節約し、寿命が終了した製品の廃棄コストを回避できます。2番目のユーザーは、大容量で高性能の再認定済みドライブを大幅に安いコストで取得できます。
環境パフォーマンスの向上:Seagateは、再利用によって製品寿命を延ばすことで、資源効率を向上させるとともに、再利用製品を購入するお客様が内包炭素量およびスコープ3排出量を削減し、持続可能性目標を達成できるよう支援します。
これらの利点を最大限に引き出すための開始点は、LCAの実施です。製品の仕様、サプライ・チェーン情報、包括的な原材料と部品のインベントリ、使用段階のエネルギー消費プロファイルを分析し、環境への影響を包括的に把握します。原材料の採取から生産、使用、寿命終了までのライフサイクルのすべての段階にわたって発生する影響には、GHGの排出、人体への毒性、鉱物資源の枯渇、水の消費(SeagateのLCAで考慮されている主な影響分野)のほか、オゾン層の破壊、淡水および海洋の富栄養化、その他のカテゴリなどが含まれることがあります。
LCAデータを用いた複数の研究で、電子機器の循環がもたらす利点がわかっています。ジン (Jin) 氏およびその他の著者ixは、未加工原料の生産と、寿命が終了した製品のリサイクルを比較した結果、ハードディスク・ドライブ (HDD) の再利用に優れたGHG排出量削減効果があることを発見しました。アルデンテ (Ardente) 氏とその他の著者xは、新品サーバーがエネルギー効率に優れている場合でも、エンタープライズ向けの再生品サーバーの方が、同等の新品サーバーよりも総合的な環境負荷が低いことを発見しました。