イノベーション

AI時代を支えるナノ技術

SeagateはHAMRハードディスク・ドライブの大量出荷、Mozaicプラットフォームの向上、AI時代の爆発的なデータ増加に対応するための100TB超という容量の実現に向けたロードマップを発表しました。

目次

Seagateの画期的なMozaicテクノロジーによりディスクにデータが書き込まれる様子を表す画像 Seagateの画期的なMozaicテクノロジーによりディスクにデータが書き込まれる様子を表す画像 Seagateの画期的なMozaicテクノロジーによりディスクにデータが書き込まれる様子を表す画像

インサイトもイノベーションも、AIが約束する成果を左右するのはデータ次第です。それも、膨大な量のデータにその成否がかかっています。

そしてそのデータを活かせるか否かは、これまで以上に大容量ストレージに頼るところが大きいため、Seagateが世界に先駆けて起こしたハードディスク・ドライブのイノベーションは、この上ないタイミングでの画期的な出来事でした。

この記事で紹介するのは、当社のCEOであるデイブ・モズレー (Dave Mosley) 博士とそのリーダーシップ・チームから、2025年に開催された投資家やアナリスト向けのイベントの中で重要事項として語られたものです。以下に要点をまとめましたのでご覧ください。

  • Seagateの世界初となるHAMR対応大容量ハードディスク・ドライブは、折り紙付きの、プロバイダから認定を受けた、今まさにAI時代を支える製品として大規模に市場投入されている。このイベントでSeagateは「ハードディスク・ドライブはデータ時代を支えられるだけの速さで進化を続けており、ドライブ1台あたり100TB以上(ディスク1枚あたり10TB以上)も視野に入っている」というメッセージを発信した。
  • Mozaic 3+は複数のハイパースケール・クラウド・サービス・プロバイダによる認定に合格。ディスク1枚あたりの容量が3TBを超える、Mozaic 3+テクノロジー・プラットフォーム搭載ドライブを大規模に市場に投入している。大手クラウド・サービス・プロバイダ3社から認定を受けており、別に進行中の案件もある。
  • 昨年は100万台を超えるHAMRドライブを出荷しており、容量換算では550エクサバイト (EB) に上る。これは現在全世界のスマートフォンに保存されているデータの3分の2以上に相当する。
  • Mozaic 4+は今年後半に認定審査を開始予定。内部効率の倍増により、容量はディスク1台あたり4TB以上に達する見込み。
  • 2032年までに100TBを超える目処が立っている。
    ラボ環境では2024年にディスク1枚あたり6.5TBの容量に達したことがSeagateのエンジニアにより実証された。現在、実証実験下では2028年までにディスク1枚あたり10TBを達成できる見込み。2032年頃にはドライブ1台あたりの容量が100TB以上に達するという以降の道筋は、HAMRテクノロジーの継続的なイノベーションや鉄プラチナ系合金メディア、次世代のプラッタ・アーキテクチャにより実現する見通し。
  • Graph shows Seagate Exos five-year cycle from lab demo to product using Mozaic technology, reaching 10TB per disk areal density by 2028.
  • Seagateの優位性を支える精密ナノ工学。
    Seagateのプラットフォームでは数あるナノ技術の中から、熱伝達にレーザー・イン・スライダー・フォトニック・システムを、ピンポイントでの活性化にプラズモニック近接場トランスデューサを、正確なリードバックにピントロニック・センサーを採用し、さらに垂直統合型の読取り/書込みヘッドを組み合わせている。

「ここに用いられているのは原子層堆積テクノロジーです。

これを真似するのは至難の業です」こう話すCTOのジョン・モリス (John Morris) は、次のように続けます。「このテクノロジーによってさらに10年以上の製品革新が可能です」

  • 革新的な記録密度による費用対効果、持続可能性、フリート・パフォーマンスの押し上げ効果。
    1平方インチあたりのデータ量を増やすことで、大規模展開に必要なドライブの総数を削減することに成功。12TB(旧世代のハードディスク・ドライブ記録技術で構築された現在のデータ・センターにおける平均容量)のPMRドライブと比較した場合、Mozaic 4+の性能は以下のとおり。
    • 床面積の利用率が3倍
    • 電力効率が5倍
    • 二酸化炭素の排出量が7分の1

1000ペタバイトにあたる1エクサバイト(EB)を、仮に40TBのドライブを使用して展開する場合、24TBのPMRドライブを使用した場合よりも17,000台少なくて済み、使用するスペースや電力の節約になり、運用負荷が軽減される。

  • AIワークロードが長期にわたるストレージ需要の急増を牽引。
    Seagateの予測では今後4年間のニアライン・ストレージに対する需要は7.2ゼタバイトに上る。これは過去10年間に業界全体で使用された規模を上回る数値。推論やビデオ、機械学習アプリケーションについては、「いずれもAIの領域」と話すのはモズレー。そうした新しいアプリケーションによって前例のない規模でデータが生成されており、その保存には安全と手頃さ、耐久性が求められる。
  • Seagateの利益率は面密度が向上するごとに増加する。
    CFOのジャンルカ・ロマノ (Gianluca Romano) によれば、非GAAPベースの粗利益率は19%から36%に上昇し、目標の40%が視野に入ってきた。さらに四半期の売上高が26億ドルを超えると、増収分の粗利益率は約50%になると予想される。
    好業績を後押ししているのが、供給における継続的な規律の徹底、需要の可視化、価格設定の最適化、他社とは差別化した製品による収益性の向上などの要素。
  • HDDはNANDフラッシュに対し、コストや設備投資の面で依然として大きな優位性を持っている。
    CCOのB.S.テイ (B.S. Teh) は次の点を強調。「ハードディスク・ドライブの価格は未だにSSDの6分の1であり、この差が埋まることはありません」また、HDD製造に関する設備投資効率が依然4~6%の範囲にあるのに対し、NANDとDRAMは35%以上である点を指摘。
  • Graph outlines how hard drives deliver cost, scale, efficiency, and sustainability advantages for mass data storage.
  • エッジ・ローカル・ストレージの分野は急速に成長しており、Mozaicはその需要に応えるべく規模を拡大している。
    クラウドに限った話ではなく、150か国以上でデータ・ローカライゼーション関連法規が導入(UNCTAD調べ)されており、エッジへの導入が急速に増加している。統合の複雑さを極力抑えつつ、ドライブ1台あたり10TBから40TBまで増強できるMozaicの拡張性は、主権者や組み込みストレージのニーズを満たすのに適している。
  • 他社に後れを取らないというだけでなく、一歩先を行くのがSeagateの立ち位置。
    ディスク1枚あたり10TBという明確な道筋を示し、事業モデルを活性化し、業界最先端の高精度のフォトニクスを武器にして、需要に応えているだけでなく、需要そのものを創出している。

最後に、モズレーの言葉を紹介します。「当社の仕事は世界に誇るべきものです。史上屈指の洗練された機器を作り上げたのですから」

イベント映像とプレゼンテーション資料については、こちらのリンクからご覧いただけます:https://investors.seagate.com/events/event-details/2025/Seagate-2025-Investor-and-Analyst-Event-2025-5KmmN1PxbM/