ステファニー・ヘルナンデス (Stephanie Hernandez)
23 3月, 2026
Seagateのシニア・エンジニアリング・ディレクターであるステファニー・ヘルナンデスに話を聞き、Seagateの画期的な熱補助型磁気記録 (HAMR) 技術プラットフォームであるMozaic™の内側に迫ります。
「The Data Movement」の今回のエピソードでは、ホストのポール・ラングストン (Paul Langston) 氏が、Seagateのシニア・エンジニアリング・ディレクターであるステファニー・ヘルナンデスと対談し、Seagateの画期的な熱補助型磁気記録 (HAMR) 技術プラットフォームであるMozaic™の内側に迫ります。
ステファニーには、大容量ストレージ技術の研究者として15年にわたる経験があります。現在はHAMRイノベーションのリーダーであるという立場を踏まえ、原子スケール・エンジニアリング、集積レーザー、次世代メディア設計における最先端技術の進歩が、30TBや40TB、さらに将来的には100TBクラスのドライブを実現する仕組みを解説します。これらはすべて、なじみ深い3.5インチ・フォーム・ファクタ内で実現されています。
今回のエピソードでは、以下について理解を深めることができます:
ポール:今日ほど、データという資源が世界を動かす力を持っている時代はありません。私はポールです。このポッドキャストでは、イノベーターたちがデータを活用して、私たちの暮らしや仕事、創造のあり方をどのように変革しているかを探っていきます。本日は、Seagateのシニア・エンジニアリング・ディレクターであるステファニー・ヘルナンデス氏をお招きし、AIによってかつてない規模のストレージ需要が生じている重要な時期に登場した画期的な技術、「Mozaic」についてうかがいます。それでは始めましょう。「The Data Movement」にようこそ。
ステファニーさん、番組にお越しいただきありがとうございます。
ステファニー:お招きありがとうございます。
ポール:こちらこそ、お越しいただき光栄です。この会話ができることを、いろいろな理由でとても楽しみにしていました。まずは少し時間を遡ってうかがいます。Seagateに15年間在籍されているわけですが、これまでの仕事や、その間に起きたストレージ業界の変化、それに対する視点についてお話しいただけますか。今はまさにそうした変化の真っただ中ではないでしょうか。まずはそこから始めましょう。15年間、Seagateでどのような仕事をされてきたのですか?
ステファニー:私はSeagateにリーダーの設計者として入社しました。もう少し遡ると、私はミネソタ大学で博士号を取得したのですが、大学院生時代からすでに磁気記録の研究をしていました。ランディ・ヴィクトラ教授の研究室にいて、教授は高度なHDD技術の設計に力を入れていました。その研究は計算機科学的な側面が強く、当時の私の関心とぴったり合っていました。教授がSeagateから資金提供を受けていたこともあり、Seagateでのインターンシップの機会を得て、約15年前にここミネソタ州でリーダーの設計者の職に就くことになりました。当時の仕事はモデラーでした。つまり、物理ベースのモデルを用いて、記録密度に応じてリーダーの設計をどのようにスケールアップすれば、必要な性能を確保できるかを考えていました。のちに研究グループに異動しましたが、そこは私の関心により合っていました。10年、20年先の未来にどのような技術が必要になるかを考えるのが好きなのです。同じミネソタにあるSeagateのリサーチ・グループに入りました。そこで本格的に熱補助型磁気記録 (HAMR) のモデリングを開始しました。私が入ったとき、それはまだ未来の技術でしたが、ついに現実のものとなりました。現在、私は未来を見据えるグループを率いています。HAMR技術に加え、HAMRに続く技術、HDD、さらにそれに替わるデータ・ストレージ技術についても検討しています。
ポール:なるほど、素晴らしいですね。ではHAMRについて少し詳しくうかがいます。現在、業界で非常によく取り上げられているトピックです。Seagateは、このエピソードが公開される頃までには、1ドライブあたり40テラバイトを実現する新たな記録密度の技術に関する大きな発表を行っていることでしょう。
さらに、お客様がそうしたドライブをどのように活用しているかも紹介されているでしょう。その話の前に、13~15年前、あなたが仕事を始めた頃を振り返りたいと思います。当時、HAMRに対する評価はどうでしたか?
ステファニー:Seagateに入ってから今まで、設計グループの中で垂直磁気記録 (PMR) からHAMRへの移行を経験してきました。その変化がいかに大きなものだったか、いくら強調してもしすぎることはありません。私たちの業務の中心がHAMRになる前は、誰もが懐疑的でした。
その技術を実現するためには、解決するべき課題が山積みだったからです。大きな変化が必要でした。まったく新しいメディア設計と、まったく新しいヘッド設計が必要でした。光学素子を搭載したヘッドが必要でした。さらに、記録密度の向上に応じたリーダーの技術も必要でした。
記録密度と容量が増加するにつれ、記録システムのすべての構成要素を、その容量の増大に対応できるように設計しなければならないのです。ですから現在に至るまでには、解決するべき多くの課題や困難がありました。そのため、当時は確かに懐疑的な声も多かったですが、設計が進化し、理解が深まるにつれ、この技術は根本的に実現可能性が非常に高く、課題は工学的な問題であり、HAMRへの理解が深まれば克服できるということが明らかになりました。
ポール:懐疑的見方というのは、その技術が根本的に機能するかどうかについてだったのでしょうか。または少なくともその時点で機能することは証明できていたものの、従来のPMR技術と同じレベルまで拡張できるどうかという点だったのでしょうか。
ステファニー:HAMRを使えば根本的により小さなビット・サイズを記録できるという点では、確かにこの技術は根本的に機能すると考えていたと思います。しかし、そのような製品を展開するために必要な信頼性や性能の要件を満たしつつ、実際に現実世界で稼働するシステムをどのように設計するのかが問題でした。
拡張性については常に確信していました。そのことは時間を経るにつれてより明確になっていました。でも確かに、デバイスの堅牢性を確保することが最大の課題の一つでした。
ポール:とても興味深いですね。今、私の机の上にSeagateドライブがあります。おそらく15年近く前のものだと思います。あなたが入社した頃の製品ですね。4テラバイトで3.5インチのドライブです。ハードディスク・ドライブ技術で最も興味深いと思うことの一つは、そのフォーム・ファクタです。15年前の製品にもかかわらず、このグレーの箱の形状と寸法は、今も変わっていませんね。それには明確な理由があり、フォーム・ファクタを変えることはできないわけです。つまり、先ほど触れた高度なイノベーションはすべて、実はこの小さな四角い箱の中で起こっている。これは実に興味深い技術的、創造的な挑戦ですね。それ関連して、もう一つお話しいただけますか。超常磁性記録の…
ステファニー:限界。
ポール:失礼、限界です。超常磁性限界についてと、その理由についてお話しいただけますか?なぜそれが重要なのでしょうか。問題の解決に役立つ、どのような技術が内部で使われているのかを詳しく教えてください。
ステファニー:わかりました。長年にわたり、多くの人がハードディスク・ドライブの終焉を予測し、ハードディスク・ドライブの磁気ディスクに記録できるビットの最小サイズには限界があると言われてきました。つまり超常磁性限界です。磁性体の粒子サイズが小さくなると、熱的に非常に不安定になるということです。
磁性ではなく常磁性となり磁性を失ってしまうため、情報を保持できなくなります。ご存じのとおり、私たちはこの20~30年間、そしてそれ以前にも、さまざまな技術を進化させてきました。そうした重要な技術的進化のそれぞれが、超常磁性限界を打ち破るチャンスをもたらしてきたのです。
具体的には、さらに微細な粒子サイズに対応できる新しいメディア設計を取り入れることができました。ハードディスク・ドライブ内のディスクの記録材料は粒状の磁性体ですが、その粒子のサイズは現在、約10ナノメートル、またはそれ以下です。技術が進化するたびに、より微細な粒子サイズに対応できる新しいメディア設計が可能になってきました。つまり私たちは超常磁性限界を突破することに成功しました。実際の限界がいつ訪れるのか、正確にはまだわかりません。
いずれは訪れるでしょうが、現在の熱補助型磁気記録技術は、まだ大きな進展が期待できると考えています。
ポール:なるほど。では粒子サイズについて教えてください。この問題でなぜそれが重要なのでしょうか。
ステファニー:はい。情報というのはディスク上のトラック、つまり、ビットの列として記録されます。ビットの列が、ディスクに書き込まれるデータを構成しているわけです。各ビットは情報の基本単位であり、「1」か「0」、または「1」か「-1」です。これらのビットは同じ方向に磁化された粒子の集合体です。ビット・サイズをさらに小さくするにあたり重要なのが信号雑音比の維持です。信号対雑音比は、私たちにとって非常に基本的かつ重要な指標です。メディアからの強い信号を、雑音をできるだけ抑えて読み取りたいからです。雑音を減らすためには、1ビットあたりの粒子数を増やす必要があります。
つまり、ビット・サイズを小さくするだけでは不十分で、同時に粒子サイズも小さくする必要があるため、より小さな粒子サイズに対応できる新しい記録技術に移行することが不可欠だったのです。
ポール:Seagateで「Mozaic」と呼ばれているHAMRを実現した革新技術について触れられましたが、その基本的なコンポーネントやサブシステムにはどのようなものがありますか?
ステファニー:主にメディアについて話してきたので、そこから始めたいと思います。
ポール:はい。
ステファニー:HAMRの記録媒体はPMRとは根本的に異なり、まったく新しい設計となっています。材料は鉄白金で、非常に高い磁気特性と等方性を備えています。粒子が小さく、優れた特性を持つメディアを製造するのは常に困難ですが、高い等方性があるおかげで、従来のメディア設計より粒子サイズをはるかに微細化できるようになったのです。
この鉄白金を使えるようになった理由は、新しいライターを開発したことです。垂直磁気記録では、磁場を印加する磁気記録装置を使います。つまり、メディアに対して磁場が垂直であり、ビットもメディアの面に対し垂直に磁化されます。
HAMRもその点は変わりませんが、鉄白金は熱的に非常に安定しているため、この等方性が極めて高いメディアに記録を行うには、追加の励磁が必要となります。非常に硬磁性(磁気的に硬い)であるため、書込みが非常に難しいのです。堅牢なため、PMRライターでは情報を記録できません。この新しい、高等方性を持つメディアに情報を記録するには何らかの補助が必要になります。それを実現する、実質的に唯一の方法は熱を加えることです。しかし常時ではなく、書込みのプロセス中だけ加熱する必要があります。
磁性材料には温度が高くなると磁化や等方性、硬磁性を失うという性質があるため、ビットを書き込むときにのみ、適切な温度まで加熱したいのです。そのため、まったく新しいライターを設計する必要がありました。ディスクにビットを書き込むために必要なだけ励磁するには依然として磁気ライターが必要ですが、
それに加え、HAMR向けのまったく新しい技術である光学式ライターも必要です。まず、レーザーを使って熱を供給します。次に、レーザーからのエネルギーをメディアのすぐ隣にあるエアベアリング面まで運ぶ光導波路が必要です。さらに、近接場トランスデューサーと呼ばれる革新的な技術によってそのエネルギーを効率的に導き、メディアに非常に狭く集中した熱パルスを照射します。
このように、メディアもライターもこれまでとはまったくの別物です。さらに、これらはいわば根本的変更点ですが、システム全体も進化する必要があります。その狭いトラックを感知できるリーダーが必要ですし、ヘッドとディスクのインターフェイスも、こうした新しいコンポーネントに対応する必要があります。
ヘッドとメディアの距離を近づける必要があるため、ヘッドとメディアに施されるコーティングや層もその距離に応じて薄くしながらも、過酷な記録環境下でもメディアを保護できるように、熱に対する堅牢性が求められます。また機械的にも、非常に高いトラック・ピッチに対応する必要があります。
つまりHAMRは確かに熱によってアシストされている部分はありますが、システム全体でこのまったく新しい記録方式をサポートしているのです。
ポール:回転するディスクの一部をレーザーで加熱するなんて、まるでSFの物語のようです。その精度について詳しくお話しいただけますか?私がその話を聞いたとき、本当に驚きました。
ステファニー:ヘッドとディスクの間の距離を測ったら、その間に1本のDNAも入らないのがわかるでしょう。ライターの構造全体が赤血球の中に入ってしまうほどの大きさです。しかもこれは10年ほど前の例え話です。今ではすべてが原子レベルの精度になっています。
現在のコンポーネント全体で約数十ナノメートル規模であり、数百個のマイクロメートルサイズの部品が集まっています。製造プロセスはその挑戦的なスケールに対応できなくてはなりません。機械システムは、ディスク上の所定の位置を追跡してヘッドを正確に配置する必要があります。
トラックの幅はわずか数十ナノメートルです。30テラバイトから40テラバイト、さらにそれ以上の大容量を実現するために、これらすべてのシステムが絶えず連携しています。
ポール:本当に驚きます。あなたや同僚が話しているのは、原子レベルのエンジニアリングですね。レーザーで熱を加えているそのビットは、文字どおり原子の直径よりも小さいということになります。そのサイズの目標にピンポイントで照射し、加熱と冷却をする。ディスク上で局所的に華氏800度(摂氏427度)まで加熱し、その後、ナノ秒ほどで再冷却する必要があるんですね。
ステファニー:はい。
ポール:今までとまったく異なる次元の速度とサイズのエンジニアリングですね。
ステファニー:はい、そのとおりです。そのスポットを華氏800度で、その幅は粒子数個ほどの大きさです。これは現在のMozaic 3と4の仕様です。しかしそれがディスクあたり10テラバイトとなると、その形状はさらに挑戦的になります。
ポール:そういうものがすべて、ナノスケールのシステムやコンポーネントでできているんですね。そういうものはお店に行って買えるわけではありませんから、すべて特注ですね。つまり、ほぼすべての部品を、この特定のユースケースのためにカスタムビルドしたということですか?それについて少しお話しいただけますか?
ステファニー:Seagateは当初からHAMRに注力してきました。HAMRこそが進むべき道であると提唱してきた企業です。ですからすべてを一から設計しなければなりませんでした。HAMR記録システムの物理的原理を解明し、書込みヘッドへの光学技術の組み込み方法を検討してきました。この新しいメディアの開発をサポートするため、すべてを社内で手掛けました。すべてを自社で設計しているからこそ、素晴らしいノウハウが蓄積されています。光学式書込みヘッドの専門家にならざるを得なかった設計者もいました。今でも私たちは、開発や検討を始めたばかりのまったく新しい設計を模索しています。
社外での成果から情報を得ることもあります。学会に参加し、大学での研究に資金を提供し、世の中のトレンドや外の世界の知識を把握しようと努めています。そうしたすべての知見を取り入れて、新しい技術をどのように活用すれば、新しいリーダーや新しいメディアを生み出すことができるのかを考えようとしています。そのすべては社内で行われています。
ポール:先ほど、まるでSFのようだと言いました。現実とは思えませんが、紛れもなく現実です。しかも、これはもう研究開発プロジェクトではありません。今や、これは製品として何百万個も生産されています。
小さなグレーの箱に詰められて、世界に送り出されています。そして、ハードディスク・ドライブ業界やSeagateの事業で特に興味深いと感じることがあります。ここでは原子レベル、つまりナノメートル単位という微細な世界のエンジニアリングに取り組んでいますね。
この小さな3.5インチの筐体に、より多くのビットを詰め込めるようにするためです。しかし一方で、私たちはそれを何百万個も大量生産し、製造ラインから毎日、数エクサバイト規模のストレージ容量が生産されています。興味深いのはこの二面性です。極小のスケールで技術開発を行っている一方で、巨大なスケールで量産している。今、HAMR技術でまさにそれを実現しています。では、1日にエクサバイト規模の製品を出荷する体制を作り上げるには何が必要なのでしょうか。そのプロセスについてお話しいただけますか?こうしたものを作り上げることと、私たちが現在行っているような規模で数百万台の製品を製造し、世界中のデータを保存するというのは、まったく別次元の話です。
私たちが今行っているのはまさにそういうことです。材料を探すことから、コンポーネントを構築し、そうしたコンポーネントを何百万個もすべて自社内で製造し、組み立て、先ほどおっしゃっていたように性能や耐久性のテストを行ったのですよね。
ステファニー:はい。
ポール:機械、製造設備、人員、プロセスのすべてを調整したのですね。
ステファニー:そうです。
ポール:そう考えると驚くべき作戦ですね。
ステファニー:どのような技術も、最初は一つのアイデアから始まります。世代を経るごとに統合されてきた新しい技術も、はじめは担当者が1人か2人しかいない研究プロジェクトでした。プロジェクトの有望性が増すにつれて人員を増やしていきます。
まずは既存のツールを活用してコンセプトを検証したり、外部パートナーと連携して技術の実現可能性を検討したりします。そのようにして段階的にファネルを下っていくのです。ファネルの入り口には数多くの技術があり、それらすべてを詳細に評価した上で、次のステップとしてより多くの人員をプロセスに巻き込み、多くの社内作業を行います。そこまで生き残った技術がいくつかあったとして、次の段階に進めるのは1つか2つでしょう。そして、新しいプラットフォームの開発に、
より多くの既存のプロセスを組み込み始めます。このように、研究から開発へと段階を追って進み、開発の過程を経て製品化へと近づいていきます。成熟度のサイクルをさらに進めるには、まず複雑な仕組みや記録の物理的原理、その他さまざまな要素を理解する必要があるため、段階的に移行します。一方で、Seagateには確立された製造プロセスがあります。この新しい技術を取り入れるには、その製造工程を段階的に変更していかなければなりません。つまり、PMRからHAMRへの移行は、スイッチを切り替えるようにできるものではないのです。
非常に緩やかなプロセスで、夢やアイデアから始まり、会社全体とより多くの社員が関わるようになります。こうして、数千人の人々の努力が実って、最終的にはお客様に提供できるものを生み出すことができます。
ポール:お客様という言葉が出ましたが、こうした技術はなぜ重要なのでしょうか?Seagateは量子物理学を駆使して、この小さな箱の中で技術革新を起こしています。これがなぜお客様にとって、
世界にとって重要なのでしょうか?
ステファニー:結局、お客様が求めているのは接続するだけで使用でき、従来の製品とほぼ同じように動作し、優れたパフォーマンスを発揮する、大容量の製品だと思います。また、お客様がこの製品に搭載されている技術に関心を持っているのは、Seagateには技術を進歩させるための計画があるという確信を得たいからでしょう。
私たちは常に、データが世界中で生成されるデータが爆発的に増え、それらすべてを保存するのに十分なストレージ容量を確保できないだろうと予測してきました。しかし、生成されるデータの多くを保存することはますます重要になってきているため、私たちは引き続き容量を増やしていかなければなりません。
そのため、フォーム・ファクタを変えずに容量を増やし続けるということが非常に重要です。
ポール:MozaicなどHAMR製品の典型的な大容量ドライブは、主にどのような環境で使用されるのでしょうか?またそれはなぜですか?
ステファニー:Seagateの大容量ドライブはすべて、大手ハイパースケーラーに納入されています。ハイパースケーラーの設置面積には限りがあります。そのため、データ・ストレージ・システムの設置面積を増やすことなく、大容量かつ利用可能な容量の拡張に対応できるドライブを提供し続ける必要があります。
こうしたハイパースケーラーやクラウド・サービス・プロバイダの名前は誰もが知っていますし、私たちは皆そのサービスを利用しています。誰もが大量のデータを保存し、アクセスする必要のあるデータを大量に生み出しています。したがって、時間とともに増加するデータに対応できるデバイスを提供することが重要になります。
ポール:フォーム・ファクタを変更しないという話に戻りますが、それはスロットに収まる必要があるからですね。データ・センターのスロットを取り外して交換したり、フォーマットを変更したりすることはできません。決められた枠組みの中で革新を続けなければなりません。
先ほどおっしゃったとおり、データの量の爆発的増加、データの価値の上昇、保存期間の長期化、データへのアクセシビリティなど、あらゆる要因がストレージ需要を押し上げています。この技術の重要性は、お客様がその増加ペースについていけるように支援することにあるのだと思います。
昨日検討していたのですが、大規模なドライブ群を運用している興味深い顧客シナリオがありました。数十万台以上のドライブ群を運用している場合の影響です。エクサバイト規模で運用している場合、たとえば20テラバイトのドライブ群を40テラバイトにアップグレードすると、同じ設置スペース内で実質的なストレージ容量を2倍に増やすことになります。また、先ほど触れていたとおり、今日の課題の一つは空間、つまり物理学ですよね。物理的な世界には限界があります。ドライブ内部の空間に制限があるのと同様に、ドライブが差し込まれるスロットの環境にも制限があります。だからこそ面密度が重要になるわけですね。
今の話がまさにその裏付けになっています。
ステファニー:はい。私たちが取り組んでいることは純粋に面密度の向上です。ビットのサイズを小さくすることで、いかにして面密度を高め続けるかという点です。そうすることで、すべての技術を、現在の筐体のサイズに収めることができます。今後の道筋は、容量を100テラバイトまで増やし続けることですが、それは純粋な面密度の追求です。
ポール:今の話で、気になることを言いましたね。ディスクあたり10テラバイトです。Mozaicは現在4テラバイト強ですね。将来を見据えて、どのように面密度でのイノベーションを続け、長期的に容量を拡大していこうと考えているのでしょうか。それについて教えていただけますか?
ステファニー:もちろんです。ええ。4テラバイトから10テラバイト、さらにその先に至るまで、根本的な障害は特に見当たりません。先ほど言ったように、すべては純粋な面密度の向上にかかっています。そのためには、コンポーネントのサイズを小さくする必要があります。リーダーをさらに小さくし、
重要な書込み要素も小さくし、より小さくなるビットに対応するため、粒子サイズも小さくする必要があります。実は、私たちは実験室で、ディスクあたり7テラバイトのデモンストレーションに成功しています。つまり、現在の製品からすると、ほぼ倍です。
ポール:素晴らしい。
ステファニー:これは実際の研究室での実験です。次世代のメディアとヘッドを使用し、ディスクに実際の情報を記録し、その情報を復元しました。そのコンポーネントの形状は、現在のものよりはるかに挑戦的です。ですから、この7テラバイトのシステムをすぐに製品化することはできませんが、記録システムで何が実現可能かを示す概念実証の役割を果たしています。また、マルチセンサー磁気記録機能も実証しました。
2台のリーダーがあるかのようにシミュレーションして信号処理を行い、それによってより幅の狭いリーダーを使用できるようにします。より狭いトラックの情報を読み取るには、2つのリーダーが必要です。そのようにして、ディスクあたり7テラバイトの容量を実証しました。
ポール:今のリーダーは1つですね。
ステファニー:はい。HAMRのリーダーは1つです。はい。これを2つにすれば、より幅の狭いリーダーを使用できるようになります。
先ほども言ったとおり、磁性材料は体積が小さくなると不安定になります。HAMRを使えば非常に狭いトラックで書き込めますが、リーダーも同様に狭くする必要があります。面密度を高めるには、リーダーも狭くしなくてはならないのです。そこで、2つ以上のリーダーを使用することで、単独の場合よりもリーダーを実際に小型化できます。そういうわけで、面密度のデモでマルチセンサー磁気記録のシミュレーションも行われました。繰り返しますが、現在の製品に搭載できるものより小型のリーダーを使用できます。このデモで、ディスクあたり7テラバイトを実現するのに十分なほど小さいビットを書き込めることを実証しました。
今後は、こうした微細な形状やコンポーネントを、いかに信頼性の高い方法で製造するかが課題となります。7テラバイトの先に進むには、さらに多くのアイデアが生まれています。異なるマルチセンサー磁気記録技術を用いることで、二次元磁気記録が可能になります。これはディスク上の情報をエンコードするまったく別の方法です。
これにも2つのリーダーが必要です。他に、「ベクター記録」という別の概念があり、ディスクに書き込まれたパターンから生じるさまざまな磁場の方向を検知します。こうしたアイデアは、リーダーの幅やスケーリングに関する問題を緩和し、より幅広いリーダーを使用できるようにします。
また、非常に狭いトラックのピッチに対応した新たな機械システムも必要となります。マルチセンサー磁気記録技術では2つのリーダー間の距離を極めて正確に保つ必要があるためです。また、新しいリーダーの素材や設計についても検討しています。HAMRライターの主要な寸法の縮小、メディアの粒子サイズの縮小、それに対応した新しいメディア素材の採用を進めています。
ディスクあたり10テラバイトを実現するためのアイデアはたくさんあります。取り組むべき点はまだたくさんありますが、先ほど言ったとおり、多くの大学と提携してさまざまなコンセプトを模索しています。社内だけでは専門知識が不足し、検討できないような新しいアイデアがある場合、外部の研究者と提携してそうした技術を検討してもらい、最終的にはSeagateの設計に取り入れることもあります。ディスクあたり10テラバイト、さらにそれ以上の容量を実現するには、まだ解決するべき課題はたくさんあります。しかし私たちはHAMRには高い拡張性があると考えています。
HAMRは新しい技術を構築するための非常に優れたフレームワークです。容量と面密度の拡大を根本で支えるものだからです。あとは、それがどこまで通用するかを見極めるだけです。それは未知数ですが、10テラバイトには確実に到達できると確信しています。
その先は、HAMRがどこまで可能性を広げてくれるのか見守る必要があります。
ポール:ディスクあたり10テラバイトを超える容量になっても、HAMR技術の理論的な枠組みは維持されるということですね。コンポーネントやシステムを縮小し、ナノスケールの工学での革新を重ねることが原則で、それによって面密度の目標を達成するのですね。
ステファニー:そのとおりです。コンポーネントを小型化することが、面密度を向上させるカギです。それに、ディスクへの情報の記録方法についても、新しい方法を模索する必要があります。ビットのサイズや各コンポーネントの形状に関する制約を緩和しつつ、どうすればより多くの情報を記録できるか、ということも
検討しているところです。結局のところ、HAMR技術ならディスクあたり10テラバイト以上の容量を実現できると思います。それにしても、ハードディスクは長年使われていますが、ポールさんの手元にあるものも含め、外見が昔と変わっていないというのは、本当に驚くべきことです。
開けてみたとしても、実は中身も見た目は同じです。ハードディスク・ドライブを最初に設計した設計者たちは、そのデザインが30テラバイト、40テラバイト、さらに100テラバイトもの容量に対応できると考えたでしょうか?すべてというわけではありませんが、ハードディスク・ドライブは非常にうまく設計されているため、このように極端な形状の微細化にも対応できます。機械システムも含めて、この究極の形状をサポートしています。私たちの目標は、この回転ディスク・アーキテクチャを可能な限り長く維持することです。
ポール:その先はどうですか?数々の技術の変遷を乗り越え、今日でも世界中のデータを保存し続けている、古き良き回転ディスク・アーキテクチャの先には何があるのでしょうか。中核的なイノベーションの道筋とは別に、研究プロジェクトやアイデア創出の取り組みはありますか?会社として関心のある興味深い記録技術はありますか?
ステファニー:はい。私たちの基本的な目標は、その回転ディスク・アーキテクチャを拡張し続け、磁気記録の枠を超えていくことです。つまり、いずれは超常磁性限界に達し、粒子サイズを小さくできなくなるでしょう。それがいつかはわかりません。しかし、磁性材料に代わる他の種類の材料も存在します。
たとえば強誘電体です。磁性材料よりも小さなビット・サイズで情報を保存できる記録メディアとして、他にも適したものがあるかもしれません。これはあくまで非常に推測的な研究プロジェクトです。基礎的な物理モデルを構築したり、大学と連携したりといった領域です。回転ディスク・アーキテクチャ以外では、DNAデータ・ストレージのような技術にも注目しています。私たちは、HDD以外のアーキテクチャの動向を単に眺めているだけではありません。しかし、今のところ、HDDを置き換えられるような製品は見当たりません。HDDはデータ・ストレージの階層の中で、非常に特殊な位置を占めています。
現在話題になっている技術に、HDDの代替となるものはありません。私たちは、デバイスの容量をさらに増やすために、HDDに取り込めるものを検討しています。
ポール:隣接する研究分野のようなものですね。それを中核となるアーキテクチャに統合しようとしている、ということでしょうか。それを研究して、会社の主要なロードマップに取り入れる要素があるかどうかを確認するんですね。
ステファニー:そうですね。SeagateはHDDだけでなく、データ分野でより多くの部分に関与すべきだと思います。データ分野の他の部分に関与できる機会があるか、見極める必要があります。
ポール:そろそろ時間ですね。ステファニーさん、興味深いお話をありがとうございました。この技術やあなたの仕事についてリスナーが知っておくべきことで、まだうかがっていないことはありますか?
ステファニー:私がなぜ磁気記録の分野で働くことを選んだのかということでしょうか。2010年当時、これは大学院生が選ぶ典型的な分野ではなかったからです。しかし、学生時代はもちろん、Seagateでエンジニアとして働き始め、さまざまな技術について学ぶにつれ、いかに多種多様な技術が1台のハードディスク・ドライブに詰め込まれ、それらの技術がいかに進化してきたかに驚かされました。このことは世間にはあまり知られていないと思います。箱の外見も、その中身も同じように見えますが、顕微鏡やそれ以上の解像度を持つ機器を使って一つひとつのコンポーネントを観察してみると、まったく異なる素材でできていることがわかります。
ハードディスク・ドライブで行われているすべての処理には、まったく異なる物理法則が用いられています。ハードディスク・ドライブは見た目以上の存在だということをぜひ知ってほしいと思います。驚くべき技術です。時間の経過とともにこれほど拡張したり、変化したりしたことは本当に驚きです。
ポール:そのとおりですね。たとえばナノロボティクスを手掛けるスタートアップで働くような魅力ですね。学校を卒業したばかりの新人などの若手エンジニアにとって、興味深く、魅力的な仕事というのが、まさにハードディスク・ドライブです。ロボットのようです。世界に計り知れない価値をもたらすナノロボットです。おっしゃるとおり、あまりにもシステムがよく設計されているため、肉眼で見える部分はここ数十年ほとんど変わっていませんが、中身は違います。
顕微鏡の下で、数多くの驚くべきイノベーションや技術が結集し、統合され、想像を絶する規模で製造されています。本当に素晴らしいですね。
ステファニー:そのとおりです。
ポール:ステファニーさん、お話しできて本当に楽しかったです。あなたの仕事について多くのことを学べましたし、私があまり知らなかった会社の取り組みについても大変勉強になりました。丁寧に説明していただき、また本日はお時間を割いていただき感謝します。
ステファニー:このような機会をいただきありがとうございました。私もお話しできて光栄でした。
ポール:次のイノベーションの展開や、ディスクあたり7テラバイト、さらには10テラバイトの達成、そしてSeagateであなたとチーム、同僚の皆さんが推進しているすべての取り組みを楽しみにしています。本当に素晴らしい取り組みですね。
ステファニー:ありがとうございました。
ブランドおよび統合マーケティング担当シニア・ディレクター
Seagateの32TB Exos、SkyHawk AI、IronWolf Proのドライブは、クラウド、エッジ・ビデオ、NASワークロード専用に設計されたCMRストレージです。