03 3月, 2026
執筆者:Seagate最高商業責任者、B.S.テ (B.S. Teh)
AIとデータ駆動型のワークロードにより、インフラストラクチャが再び注目を集めています。しかしよく見ると、議論の焦点は1つのブレークスルーというよりも、世界中でデータ層を経済的かつ持続可能な形で拡大し続けられるかどうかに置かれています。
世界的なデータ生成は、これまで経験したことのない速さで加速しています。2005年、世界ではおよそ1ゼタバイトのデータが生成されていました。2020年までに、その数値は70ゼタバイト以上に増加しました。今後数年間で、さらに数百ゼタバイトの増加が見込まれています。AIはデータ量の増加をもたらした要因のひとつではありますが、それだけではありません。クラウド・サービス、動画、自動化、コンプライアンス、そして接続されたシステムが、この急増に拍車をかけています。
Seagateでは、これは単なる技術サイクルではなく、インフラストラクチャと資本配分の転換であると考えています。データが増えるにつれ、次の問いは差し迫ったものとなります:この転換に合わせてインフラストラクチャを経済的かつ持続可能な形で拡張できるか?
AIインフラストラクチャについて語られる際、コンピューティングに焦点が当てられがちです。しかし、コンピューティングはデータなしでは実行できず、データは大規模に保持および保護し、検索できるようにしておかなければなりません。つまり、データを保存する場所が必要なのです。
ハイパースケール環境においては、そのデータの大部分はハードディスク・ドライブ上に保存されています。ハードディスク・ドライブが使用されるのは、これまでの慣行によるものではなく、世界規模の運用では経済性が重視されるためです。テラバイトあたりのコストとエネルギー消費量、ラックあたりの容量といった変数は、インフラストラクチャの長期的な費用対効果に直接影響を及ぼします。
Seagateが注力しているのは、まさにこの経済性です。
昨年、Seagateは業界初となるHAMRベースの本番環境用ストレージ・プラットフォーム「Mozaic」を提供しました。現在、Mozaicは次世代のMozaic 4+へと進化しています。
SeagateのMozaic 4+プラットフォームは、2社の主要なハイパースケール・クラウド・プロバイダによる認定を受けて本番環境に導入されており、ドライブ1台あたり最大44テラバイトの容量をサポートしています。見出しに載る技術と転換点となる技術の違いはシンプルで、本番環境で使用できるかどうかです。そのため、Mozaic 4+が本番環境に導入されていることは重要です。これは研究室での実証実験ではなく、現実世界で稼働しているインフラストラクチャなのです。
Seagateが他社と異なるのは、単なる容量のマイルストーンではなく、その背後にあるロードマップの予測可能性を提示している点にあります。Seagateは100テラバイト・クラスのドライブの提供に向けた明確な道筋を描いています。ハイパースケール・インフラストラクチャに関する意思決定は、5年、7年、さらには10年という長期的な視野に基づいて行われます。お客様は、業務停止を伴うアーキテクチャの再構築を強いられることなく、今後も継続的にストレージ密度の向上を期待できるという安心感を求めています。
具体的な数字を使って考えてみましょう。Mozaicを1エクサバイト規模で導入する場合、標準的な30TB規模の導入と比較して、インフラ効率が約47%向上します。これにより、数万台のドライブ削減、ラック設置面積の縮小、冷却要件の低減が可能になり、年間約80万キロワット時のエネルギーを節約できます。ハイパースケールでは、このような効率性が相乗効果を生み、資本コストと運用コストにおいて大きな優位性をもたらします。
ハードディスク・ドライブ容量は、これまで記録密度を高めることで拡大されてきました。これは、ドライブの物理的なサイズを大きくすることなく、ディスク表面ごとに保存できるデータ量を増やすことを意味します。しかし、従来の磁気記録技術は物理的な限界に近づきつつありました。
Seagateは20年以上前にHAMR(熱補助型磁気記録)への投資を開始しました。長期的な密度向上のためには、根本的に新しいアプローチが必要であると理解していたからです。HAMRを採用したことで、記録密度が再び向上し始めました。
簡単に言うと、HAMRとは、データ書き込み時に精密なレーザー技術を用いてディスク上の微小なスポットを瞬間的に加熱する方式のことです。この一時的な加熱により、ドライブのサイズを大きくすることなく、はるかに高い密度でデータを記録することが可能となります。いわば、敷地面積を広げずに建物を垂直方向に増築するようなものです。
Mozaic 4+では1台あたり4テラバイトを超える容量を実現しており、これは現在のハイパースケール本番環境において実証された中で最も高密度なプラットフォームとなっています。
容量を増やすと性能や信頼性が損なわれるという誤解が広く見受けられますが、これはMozaic 4+には当てはまりません。この世代では次世代サスペンション・アーキテクチャと強化されたシステムオンチップが採用されており、ドライブの処理能力の向上と、これまでにないビット密度における信頼性の高い動作を実現しています。
言い換えれば、ハイパースケール環境に必要なパフォーマンス、スループット、およびエンタープライズクラスの信頼性を維持しながら、容量を拡大しているのです。
Seagateは世界最大のハイパースケーラーおよびエンタープライズ・インフラストラクチャのリーダー企業と提携していますが、ひとつ明らかなことがあります。それは、エクサバイト規模の需要は確かに高いものの、最も重要なのは予測可能性であるということです。ハイパースケール・インフラストラクチャは、複数年にわたる計画サイクルに基づいて構築されます。お客様はストレージ層における変動性を許容できません。
データはより豊富になり、分散化が進み、より長期間保存されるようになっています。AIワークロードには、データの複製、ローカライズ、保存、再トレーニングが必要となります。AIは単にデータを消費するだけではなく、その量をさらに増大させます。
この変化により、インフラストラクチャの新たな構造的要件が発生します。お客様が最も重視しているのは次の点です:増加したデータが、制約ではなく長期的な資産になるようにするには、インフラストラクチャをどのように拡張すればよいか?
その答えは、まさに大容量ストレージにあります。現在、大規模なクラウド・データ・センター内のデータの約87%が、ハードディスク・ドライブ上に保存されています。フラッシュは高性能なワークロードに不可欠ですが、大容量データ・ストレージにおいてはハードディスク・ドライブが依然として主流の技術となっています。クラウド環境におけるハードディスク・ドライブのエクサバイト規模の成長は、NANDの約4倍に達すると予想されています。
つい最近まで、データはコスト・センターと見なされていました。今日、データは複合的な戦略的資産となっております。インフラストラクチャによって、その価値が増大するか、制約を受けるかが決まります。
この10年間におけるインフラストラクチャの明確な課題は、モデルがどれほど速く学習できるかではなく、グローバルなデータ・インフラストラクチャを持続可能な方法でどのように拡張できるかという点です。Mozaicの登場により、HAMRは画期的な技術から主流のインフラストラクチャへと進化しました。現在では本番環境向けの容量を実現しており、今後10年にわたって密度が向上していく見込みです。
Seagateでは、イノベーションによって世界のストレージ容量を拡大すべきであり、制限すべきではないと信じています。次世代のMozaicプラットフォームにより、私たちは遥か未来を見据えており、その未来は希望に満ちています。
Mozaicプラットフォームの技術について詳しくは、こちらをご覧ください。
Executive Vice President and Chief Commercial Officer
A technologist’s perspective on SC25